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安堵感スレイブ

幸福感・達成感・満足感だと思っていたものはどれも安堵感だった。

私、自分の感情が見えない

 

カウンセリングの最後に、宿題が出た。

「行動記録」を取るという宿題だった。

 

記入するのはシンプルな記録表で、縦軸は時間、横軸は日付があって1日ごとに2つの枠が当てられている。

そこに何時に何をしたかという「行動」とその時の「感情」を書き込んでくださいというものだった。

 

「最初は難しいと思うけどそのうち慣れます

 

先生はそう言ったけど、難しそうな気はしなかった。行動を記録したりするのは好きだったから。

 

 

その夜、まず記録表の行動欄を埋めることから始めた。そして、先生の言っていた注意ポイントを思い出す。

 

「その行動をしたときに考えていたことを思い浮かべてから感情を書いてください。行動から感情を連想してはダメです。まず行動を書いてください。その後、その時考えていたことを思い浮かべて、そこから感情を書いてください」

 

ほうほう。「行動→感情」じゃなくて、「 行動→考えていたこと→感情」ね。……ね。…………ん? え? 考えていたこと? 

うん、朝起きたときはね、はーって思ってた。つらたん。起きたくない。そう思ってた。だから……憂鬱かな。

で、友達とご飯食べたのは、楽しかった! じゃなくて、考えてたことをまず思い出さないと……あれ? 意外と……あれ。あれれ。結局、隙間隙間で仕事のこと考えてたみたい。どうやったら状況が好転するんだろうって。てことは、あれ。不安になっちゃう。きゃあ。

じゃ、帰ってブログを書いたのは……。今度こそ楽しいかなそれとも充実感? んと、考えていたことは……あれ? 集中だ。集中としかいえないぞ。書いてた内容の以外、何も考えてないぞ。てことは…………楽しい? でもちょっと違うんだよなー。達成感・満足感・充実感……ちょっと違う。空虚感が近いのかもしれない。

 

 

行動記録表の一角にある感情の例を見ながら、ひとつひとつ熟考してなんとか表を埋めきりました。

すんごいつかれた。ぜんぜん楽勝じゃなかった。

 

先生が「あなたは、自分の感情を無視し続けているんです」と言ったのはこういうことか。

 

私、自分の感情を見るってこと、知らなかったんだ。

 

 

 

しかも、日にちが経つごとにより難しさを感じた。

難しさが増したというより、「難しい!」って思いが日に日にクリア になっていった。

 

 

 

最初、行動記録表には、「憂鬱・不安・焦り・楽しい・嬉しい」しかなかった。

「モヤモヤ」を必死にその時考えていたことから分析して絞り出して、しっくりこないと思いつつ無理やり書いた。

 

それが、2日目には「緊張」と「空虚感」が増えた。

 

3日目には、「不満」が増え、「罪悪感」が増え、「怒り」が増えた。

 

4日目には「嫌悪感」。

 

6日目には「イライラ」と「不満」が増えた。

 

7日目には「疎外感」が増えた。

 

 

一つ一つ、世界の革新としかいえないような大発見だった。

 

 

すべて、行動記録表の右上に書いてある感情の例の中にある言葉。

毎日、自分の感情をその一つ一つに照らし合わせた。

初日はどの言葉にも反応しなかった。

それが、一つ一つ反応が増えていった。

 

ネガティブな感情ばかりなのがなんとも言えないけど、でも、自分の中に「モヤモヤ」っていうわけのわからないものばかりが渦巻いているって思っていた。靄がかかって何も分からなかった。どこにも踏み出せなかった。たまにやみくもにタックルするようにしてどこかに進んだけど、だいたい何にも当たらず何も改善せず地面にうずくまった。それだけ「モヤモヤ」だった。

 

それだけ濃かった霧が徐々に薄くなっていった。感情がちょっとずつ見えてきた。「モヤモヤ」っていうわけのわからないものではなくて、輪郭が見えるようになった。

 

それは大きすぎる変化だった。

希望を感じる変化だった。